フロリダキャンプ6:Training & Match
今回のキャンプでアクティビティ(サッカーのトレーニング・ゲーム以外の活動全般を指す)の調整・手配、現地の方とのコミュニケーションのサポートや食事の手配など活動のあらゆる部分で温かく支援してくださっているフーさん、ブライアンさん、タカマサさん、大島さんからおもしろい話を耳にした。どうやらFSU内でアカデミーの選手たちが噂になっているらしい。よく「あの青い集団は何だ?」と質問されるとのこと。毎日どこからともなく青い集団が現れ、そしてどこかへ帰っていく。FSUの関係者だけでなく、選手が毎日グラウンドへ移動する際に通る道路沿いの住民もこの謎の集団に興味を持っているらしい。また、フーさんやブライアンさん曰く、選手たちの評判がすこぶる良いらしい。その理由はいつもニコニコと笑顔で元気よく、そしていつも挨拶をするから、とのこと。確かに選手たちを観ていると、つたない英語ではあるが、現地の方とコミュニケーションをとることを楽しく感じているらしく、目があったら英語で「Hello!」と挨拶しながら、少しの会話を楽しんでいる様子が伺える。また、現地の方たちは初対面でも目が合えばあちらから声をかけてくれる。そして少しの時間だが会話をする。「どこから来たの?」、「何かスポーツをしているの?」という質問がほとんどだが、選手たちにとっては貴重な英語でのコミュニケーションの実践である。そして自分の伝えたいことが英語で通じたときの喜び・小さな成功体験を得ることができる場である。
さて、この笑顔で、元気に、そしていつも・自分から挨拶ができるということはとても大切なこと。選手たちが海外の地で実践できていることは大変嬉しいことである。これが日本に帰っても、日常生活の場でも、いつでも、どこでも、誰とでも積極的にできるように、そして大人になってもいつまででもできるように期待する気持ちでいっぱいである。
本日のスケジュールは午前中に軽めのトレーニングを行ない、午後はReal Salt Lakeというチームとゲームを行なった。
トレーニングでは、昨日のゲームで抽出された課題の修正を約1時間実施。
①組み立てからスピードアップのタイミングを創る、そして共有する
②選択肢をもつ、そして増やす
・シュート or パスの選択肢
・ドリブル or パスの選択肢
③フィニッシュの精度
この3つをテーマに実施した。もちろんアカデミーで常に追求している主導権を握った戦いをするために、①には組み立てのところでボールを失わないこと(ボールを保持し続けること)の質を上げることも含まれる。
2日連続の試合ということもあり、トレーニングは短時間で終わったが、テーマを理解して試合に向かう良い準備ができた。
トレーニングの最後には、昨年に続き今年もアカデミーの選手たちを温かく迎え、そしてサポートしてくれた山口麻美選手がなでしこジャパンのキプロス遠征に出発する前に選手たちに激励に訪れてくれた。選手たちにとっては単身アメリカにわたり、そして活躍するまでに自らを向上させ、今度はオリンピックを目指す代表の座を手にするべく旅立つ山口選手はとても身近な目標であり、自分の将来を考える上でひとつの道を示してくれる存在であろう。激励のメッセージを聞く選手たちの目はとても輝いていた。
さて、昼の休憩をはさみ、ゲームは19時にキックオフ。30分を3本行なった。対戦相手のReal Salt Lake(RSL)というチームはもともとユタ州のSalt Lake Cityにあったチームがフロリダに移ってきて、フロリダ州の南タンパにあった3つのクラブチームと合体してできたチーム。17~18歳の選手たちで編成され、スポーツ奨学生で大学進学が決まっている選手も複数いる強豪チームである。
試合前には上記の3つに加え、攻撃から守備の切り替え(スピード・パワーに勝る相手にスピードアップさせないように切り替えを早くして1人は必ずボールプレッシャーに行くこと)についても確認し試合に臨んだ。結果は4-0、0-0、0-0。昨日に比べ、前に急ぎすぎて、前5人、後ろ5人の2ラインになるようなことはなかった。正しいタイミングでの動き出し、トップの選手の有効なダイアゴナルランからスペースへスピードアップしゴールを脅かす。また日本のストロングポイントであるテクニックとアジリティの高さを発揮して足の長い相手のプレッシャーをかわしゴールを目指した。
反面、まだまだ単純なテクニックの部分(不用意なパスミス)、GKとDFのビルドアップ時の優先順位と相手の状況を理解した判断・コミュニケーション(こちらの選手はGKを含めバックパスをすると予測すると必ずといっていいほど猛スピードでプレッシャーをかけてくる)、周りの選手が複数の選択肢を創ったときのボール保持者の判断・そのための観る力には課題が残る場面があった。また、2本目・3本目には組み立ての部分でボールを動かすことができなくなる場面、その結果スペースへの有効なスピードアップの状況・タイミングが作り出せない場面が増えた。
これらのことは、これで完成ということはなく、「質を上げること」で向上し続けるものである。このキャンプではあと3試合、アメリカというひとつの世界と戦うチャンスが残されている。ゲームを繰り返し実施することでさらなる向上にチャレンジしたい。
コーチ:坂尾美穂